Unix Codex

https://github.com/openai/codex は、Unix シェルならではのパイプやスクリプト管理との相性が良く、AI を活用したシームレスなコードレビューを実現できる。 一方で、自動実行に対するセキュリティリスクも存在するため、Git 管理とサンドボックス設定などで防御を固める必要がある。例えば、下記のようなgh-prs.sh のようなscriptと組み合わせたワークフローを構築し、codex -m o3 を活用した差分解析や自動レビューを行うことで、高品質な開発プロセスを確立できる。 codex -m o3 $'コードの構造を踏まえて内容をレポートし、さらに改善提案やレビューを行ってください\n\n'"$(gh-prs.sh)" #!/usr/bin/env bash # # gh-prs.sh # ------------ # GitHub CLI で Issue 一覧を取得し、peco で選択して # `gh pr view` と `gh pr diff` で詳細と差分を表示するシンプルなスクリプト。 # # 依存: # - GitHub CLI (gh) : https://cli.github.com/ # - peco : https://github.com/peco/peco # # 使い方: # ./gh-prs.sh [gh issue list のオプション] # # 例) 自分が担当で open 状態の Issue を対象にする # ./gh-prs.sh --assignee @me --state open # set -euo pipefail # 表示調整 SUMMARY_MAX=120 # peco で視認しやすいようタイトルを truncate する長さ # pr 一覧取得 (番号とタイトルのみ、タブ区切り) LIST=$(gh pr list --limit 100 "$@" \ --json number,title \ --template '{{range .}}{{printf "%.0f\t%s\n" .number .title}}{{end}}' || true) if [[ -z "${LIST}" ]]; then echo "該当する pr がありませんでした。" >&2 exit 0 fi # peco で選択 pr_NUM=$(echo "${LIST}" | awk -v max="${SUMMARY_MAX}" -F'\t' ' { title=$2; if(length(title) > max) title=substr(title,1,max)"…"; printf "%s\t%s\n",$1,title }' | peco --prompt "Select pr > " | cut -f1) if [[ -z "${pr_NUM}" ]]; then echo "pr が選択されませんでした。" >&2 exit 1 fi # 詳細表示 + diff gh pr view "${pr_NUM}" gh pr view "$pr_NUM" \ --json comments \ --jq '.comments[] | select(.authorAssociation != "NONE") | "\(.author.login)\n\(.body)\n"' gh pr diff "${pr_NUM}"

April 24, 2025

op_CAT トリック I

https://www.wpsoftware.net/andrew/blog/cat-and-schnorr-tricks-i.html の意訳。 目的と結論 Taproot の BIP340 署名を用いると、従来コヴナントを阻む要素とされてきた循環問題を部分的に克服できる。したがって、CAT オペコードが再導入されれば、事実上 CHECKSIGFROMSTACK に近い仕組みを得られる可能性が高い。さらに署名アルゴリズムの数学的性質を悪用することで、introspection(トランザクションの内省)を実現する道が開ける。ただし、Taproot では出力先が楕円曲線上の公開鍵となるため、再帰的コヴナントを構築するには追加の工夫が要る。 背景 Bitcoin Script は通常、「認証データ(署名やハッシュロック等)の検証」を行うのみである。covenant(コヴナント)とは、支出時のトランザクション構造を条件により制限する概念である。しかし、Bitcoin Script はトランザクションデータ全体にアクセスできないため、トランザクション形式を強く拘束することはできない。もし CAT や CHECKSIGFROMSTACK が存在すれば、ユーザが提供するトランザクション全体のデータに対し署名をチェック可能となり、コヴナントの仕組みを実装できる。 概要 下記では、Schnorr 型署名(BIP340)が「コヴナント対策」を意図して設計されたにもかかわらず、実際には従来よりもコヴナント実装に近づける余地があることを示す。さらに CAT オペコードを組み合わせると、CHECKSIGFROMSTACK のような操作が可能になる。 covenants の定義 covenants: 特定のトランザクションのみがコインを使用可能になるよう制限・検証を行う仕組み。 従来の Bitcoin Script: 署名やハッシュロックは扱えるが、送金先や速度制限など複雑な制限は行えない。 CAT の役割: スタック上に展開した小さなデータ要素を連結し、任意の大きさのデータ検証を可能にする。 CHECKSIGFROMSTACK の役割: 任意のデータに対する署名検証を行い、ユーザが提示したトランザクションデータが正しいことを確認する。 ECDSA 署名と covenant の問題点 ECDSA は過去に Bitcoin で使われた署名方式である。 しかし ECDSA では、CHECKSIGFROMSTACK がない場合、トランザクションハッシュとの循環参照が発生して柔軟な制限がかけられない。 また、CHECKSIG が参照するトランザクションデータには前のトランザクションの情報や Script 自身が含まれ、完全な自由度が得られない。 Schnorr 署名(BIP340)の概要と誤解 Taproot における BIP340 署名は、旧来より「コヴナントを阻む署名方式」と見なされてきた。 署名ハッシュに公開鍵 $P$ が明示的に含まれ、循環を招くため、コヴナント的制約を実現しづらいと思われていた。 実際には、$R$ と $P$(一時鍵と公開鍵)を固定し、署名パラメータ $s$ を逆に操作することで、トランザクションハッシュをスタックに載せるトリックが可能である。 具象例 署名値 $s$ のみ入力としてスタックに載せる。 固定した $R$ として生成元点 $G$ を用い、DUP・SWAP・CAT などを駆使して署名チェックを行う。 その過程で $s$ が実質的にトランザクションデータのハッシュを表すように仕向ける。 ハッシュの末尾が特定バイトになるまでグラインド(複数試行)させれば、+1 の調整もクリア可能。 結果として、CHECKSIGFROMSTACK 的な振る舞いを再現し、Script 側が自由にトランザクションデータを制約できる。 さらなる応用と課題 CAT が正式に利用できれば、CAT + CHECKSIGFROMSTACK スタイルの内省が事実上可能となる。 しかし、Taproot の出力は EC 公開鍵で行われ、楕円曲線ハッシュが Script に直接提供されないため、再帰的コヴナントには追加の拡張が必要である。 SigHash モードのバリエーション(SIGHASH_NOINPUT など)をシミュレートすることで、Lightning チャネルのバックアップや Vaults など柔軟な応用が可能になると期待される。 Miniscript による発展 Script 設計の難しさがコヴナント応用を阻んできた要因である。 Miniscript は Script を安全かつ組み合わせしやすい形で記述・解析する手法であり、今後こうした高度なコヴナントの開発を加速させる見込みがある。 実際に CHECKSIGFROMSTACK を用いた高度な事例も存在し、Taproot + Miniscript との組み合わせで可能性が広がる。 結論 Taproot の BIP340 署名と CAT(もしくはそれに類する機能)の組み合わせを用いれば、トランザクション内省を実装できる可能性が高い。旧来の ECDSA より「コヴナント対策」が進んだ反面、実際には逆手を取ることで自由度が増している。一方で、再帰的コヴナントまで視野に入れる場合、楕円曲線ハッシュを Script が直接扱う必要があり追加の検討が必要である。Miniscript の応用や SIGHASH_NOINPUT 相当の仕組みを組み合わせることで、Lightning Network や Vaults の固有要件を満たす設計が可能になる。 ...

April 11, 2025

BIP 347

https://github.com/EthanHeilman/bips/blob/7ad0f821ddc60366e98344a1e3019114ae46c80f/bip-0347.mediawiki の意訳。 BIP: 347 Layer: Consensus (soft fork) Title: TapscriptにおけるOP_CAT Author: Ethan Heilman ethan.r.heilman@gmail.com Armin Sabouri arminsdev@gmail.com Comments-URI: https://github.com/bitcoin/bips/wiki/Comments:BIP-0347 Status: Draft Type: Standards Track Created: 2023-12-11 License: BSD-3-Clause Post-History: 2023-10-21: https://lists.linuxfoundation.org/pipermail/bitcoin-dev/2023-October/022049.html [bitcoin-dev] Proposed BIP for OP_CAT 目的と結論 Bitcoin Tapscriptにスタック上の値を連結する操作(OP_CAT)を導入すべきである。これによって、スタック要素同士の結合がシンプルに行えるようになる。現在の最大スタック要素サイズは520バイトを超えないため、TapscriptでOP_CATを再度有効化してもメモリの過度な使用につながらない。結論として、OP_CATはTapscriptの表現力を強化し、より多様なスクリプト構成を行ううえで重要となる。 背景 2010年にBitcoinの初期コードからOP_CATと他のいくつかのオペコードが無効化された。理由として、スクリプト評価時に指数関数的なメモリ使用が起こり得る懸念があった。しかし最大スタック要素サイズの制限(520バイト)が設けられたTapscriptでは、この問題が発生しない。OP_CATが再び有効化されれば、マークルツリーやハッシュ化データ構造の構築など、多くのユースケースで柔軟性が向上する。 概要 このBIPは、OP_SUCCESS126(10進数126、16進数0x7e)として予約されていたオペコードをOP_CATに再定義し、Tapscriptにおいてスタック上位2つの値を連結する操作を可能にするソフトフォークを提案する。旧来のOP_CATと同じオペコード値(126/0x7e)を使用することで混乱を最小化する。 著作権 この文書はBSD-3-Clauseライセンスで公開する。 仕様 スタック上に2つ以上の値がない場合、OP_CATは失敗する。 連結後のサイズが最大スクリプト要素サイズ(520バイト)を超える場合も失敗する。 スタック[x1, x2] (x2が最上位の場合)に対して、OP_CATはx1‖x2をスタックにプッシュする。 tapscriptのOP_SUCCESS126をOP_CATに再定義するソフトフォークにより有効化する。 動機 Tapscriptにはスタック上のデータを組み合わせる汎用手段が不足している。OP_CATが追加されると次のような事例が強化される。 ビットコイン上でのアトミックスワップや分散型ファイルホスティングシステム等、Bitstreamプロトコルの簡素化 ツリーシグニチャを用いた大規模マルチシグの実装(最大4,294,967,296個の公開鍵対応) ポスト量子暗号的シグネチャ(Lamportシグネチャ)の検討 両義性契約やVaultsなどの高度な契約構造 CheckSigFromStack相当の柔軟なスクリプト支出設計 OP_CATはUnix精神に沿うシンプルでモジュール式な機能を提供し、Tapscript開発者が複雑なハッシュ化データ構造を扱いやすくする。かつてOP_CATはBitcoinに存在していたが、無効化された経歴がある。Tapscriptではスタック要素サイズで安全性が担保されるため、再度の有効化が適切と考える。 理由 tapscriptのOP_SUCCESSxオペコードを活用するアップグレード手段を用いる。かつてのOP_CATと同じ値(OP_SUCCESS126)を再定義することで、余計な混乱を防ぐ。スタック要素サイズを引き上げるかどうかは本提案の範囲外である。提案はOP_CAT単体の再有効化を目的とし、ソフトフォーク実装で行う。 下位互換性 tapscript以外のスクリプトにおいてOP_CATを利用するとSCRIPT_ERR_DISABLED_OPCODEとなる。OP_SUCCESS126をOP_CATに再定義するソフトフォークが成立した後、tapscript上だけでOP_CATが有効となる。 参照実装 case OP_CAT: { if (stack.size() < 2) return set_error(serror, SCRIPT_ERR_INVALID_STACK_OPERATION); valtype& vch1 = stacktop(-2); valtype& vch2 = stacktop(-1); if (vch1.size() + vch2.size() > MAX_SCRIPT_ELEMENT_SIZE) return set_error(serror, SCRIPT_ERR_PUSH_SIZE); vch1.insert(vch1.end(), vch2.begin(), vch2.end()); stack.pop_back(); } break; MAX_SCRIPT_ELEMENT_SIZE は520である。 この実装は、OP_CATが無効化される前のBitcoinコード(コミット「misc changes」4bd188c)の内容に基づく。Elements実装(13e1103a)でも類似のOP_CATが確認できる。 ...

April 7, 2025

[podcast]OP_CAT

https://www.okx.com/learn/what-is-opcat をinputとし、podcastfyを用いて作成したもの。 BIPの歴史と現在:ビットコイン改良提案の本質に迫る 2011年に導入されたBIPの背景と、その民主的なプロセス 初期の頃の非公式なやり取りと、コードレビュー文化の変化 OP_CAT復活への道:BIP 347がもたらす新たな可能性 削除されていたOP_CATが、なぜいま再注目されているのか スクリプトの表現力拡大によるスマートコントラクトの将来像 ビットコインコミュニティの慎重姿勢:合意形成とレビューの意義 BIP承認プロセスのステップと、コミュニティ全体での厳格なレビュー 「Speedy Trial」など過去の合意形成手法からみるアップグレードの難しさ コベナント機能とボールト構想:OP_CATが切り拓く高度なユースケース 資金の使い道を制限する「コベナント」の具体例と利便性 タイムロックで不正送金を阻止するボールト機能の仕組み 対抗するのか、共存するのか:Ethereum的拡張VSビットコインのシンプルさ 複雑化によるセキュリティリスクへの懸念と、拡張機能を求める声のせめぎ合い OPCTVやOrdinalsとの比較から見えるビットコインの今後の方向性 未来のビットコイン:機能性と安定性のバランスをどう保つか スクリプトの拡張で生まれる新たなアプリケーションの可能性 開発者・ユーザー双方にとってのメリットと、コミュニティにおける議論の焦点

April 7, 2025

Nexus 情報の人類史 第三章メモ

『Nexus 情報の人類史 第三章:文書』を読み、編纂プロセスと現代のBitcoinプロトコル開発における類似性を感じた。 以下の記述を分析の出発点とする: 「ラビ」と呼ばれる学識あるユダヤ教徒の賢たちの間で、正典のデータベースが整理され、出回っている多くの巻のうちのどれをヤハウェの公式の言葉として聖書に含めようやく、何世紀も重ねて議論が行われていた。 編纂過程とBitcoinプロトコルの開発には、分散型の合意形成メカニズムという共通点がある。まず、古代のユダヤ教徒の学者集団(ラビ)は地理的に分散しつつ、聖典に採用すべき文書を長期的に検討した。この枠組みは、現代のBitcoinプロトコル開発における開発者コミュニティの意思決定構造と類似する。すなわち、Bitcoin Improvement Proposal(BIP)は多様な専門家らによって提案・議論され、最終的な変更点が合意に至るまでに十分な時間をかける。両者は時間を要する合意形成を重視している点が共通する。ときには数世紀に及ぶのかもしれない。 次に、古代の編纂プロセスでは文書の正統性を議論する際、複数の視点から検証する手法が採用された。Bitcoinにおいても、暗号学的な安全性やネットワーク全体の整合性を多面的に精査する。したがって、多層的な検証システムが両者の決定を堅牢にしている。研究者、開発者、ユーザーなど多彩な立場の検証がなければ、変更提案は合意に至らない。

April 2, 2025

Greenlightアプリケーションのテスト

https://github.com/Blockstream/greenlight/blob/main/docs/src/tutorials/testing.md の翻訳。 このチュートリアルの学習内容 テストの必要性と対象範囲 gl-testingテストフレームワークの概要 gl-testingとプロダクション環境の挙動の差異 前提条件 Git protoc Docker Dockerイメージの使用 環境構築 内部テスト 最初のテスト実装 IDEのオートコンプリーション活用 モックネットワークに対する手動テスト ランダムなポートとディレクトリを使用する理由 The gl-testserver How to use gl-testserver Running multiple tests in parallel このチュートリアルの学習内容 テスト用Dockerイメージの構築と活用方法 Core Lightningノードによるテストネットワークの構築技術 Greenlightテストフレームワークgl-testingの実践的活用法 Greenlightノードを用いた効率的なテスト実装 gl-testing環境でのPython REPL活用技術 テストの必要性と対象範囲 Greenlightを基盤とするアプリケーションを開発した場合、以下の検証が必須である: 現時点での動作確認 将来的な動作の継続性確保 プロダクション環境でのテストは可能だが、次の制約がある: ローカル環境と比較して実行速度が遅い Greenlightサービスのリソースを消費し、コストが発生する ローカル環境で再現性の高いテストを実行できれば、開発効率は大幅に向上する。Greenlightはこの目的に特化したテストフレームワークを提供している。 gl-testingテストフレームワークの概要 Greenlight リポジトリには、完全な機能を備えた(「バッテリー同梱」の)テストフレームワークが含まれている。このフレームワークは、Core Lightning開発にも使用されているpyln-testingをベースとしている。 gl-testingは以下の機能を提供する: 任意の複雑さを持つLightningノードネットワークの構築 Greenlightサービスのローカルモック環境の構築 pyln-fixturesを活用した高度なテスト環境の実現 再現性の高いアプリケーションテスト手法 開発依存関係の隔離 gl-testingとプロダクション環境の挙動の差異 gl-testingとプロダクションシステムの挙動における相違点はgl-testing readmeに記録されている。 このチュートリアルでは、gl-testingを使用して新規Greenlightクライアントの登録からノードでの請求書発行までのテスト実装方法を解説する。また、テストフレームワークやアプリケーションに対して手動コマンドを実行できるREPLの起動方法も説明する。 前提条件 Git gl-testingテストフレームワークはGreenlight Githubリポジトリに含まれている。作業コピーを取得するには、システムにgitのインストールが必要である。インストール方法の詳細はgit-guidesを参照のこと。 protoc 「モックネットワークに対する手動テスト」セクションではホストシステム上でgl-clientをビルドする必要がある。Greenlightはクライアント・ノード間通信にgrpcを使用するため、Protobufコンパイラprotocが必要となる。protocからインストール手順を確認すること。 Docker Greenlightアプリケーションのテストには多数の依存関係(複数のCore Lightningバージョン、多数のPythonパッケージ、rustとcargo、protoファイルコンパイラなど)が必要である。開発環境の整理のため、gl-testingテストフレームワークには必要な依存関係をすべて含む__Dockerfile__が同梱されており、ビルドされたDockerイメージ内でテストを実行できる。 Dockerイメージのビルドと使用には、動作するDockerのインストールが必要である。オペレーティングシステムへのDockerセットアップ方法はDocker manualを参照のこと。 Dockerイメージの使用 Linuxホストでは依存関係の数が多いためDockerイメージの使用を強く推奨する。WindowsおよびMacOSでは、Core LightningがLinux向けx86_64の事前コンパイル版のみを提供しているため、現時点ではDockerイメージによるテストのみがサポートされている。 ...

April 1, 2025

GCE開発環境構築

クラウド開発環境の標準化を図るために、Google Compute Engine(GCE)を利用した開発用VMを構築した。 https://github.com/YusukeShimizu/vm-infra Mac(特にMxチップ)でビルドが困難なソフトウェアを扱う際、Linuxアーキテクチャ向けバイナリが前提となるケースが多い。そこで、専用のGCE環境をTerraformでコード化し、以下の利点を得た。 もともと https://github.com/Blockstream/greenlight のdockerが動かないことが作成したきっかけである。 blockstreamのproductはlinuxアーキテクチャ向けに開発されており、Mac上でのビルドが難しいことが多い。 GCE開発環境の主な利点 リソースの動的な調整 e2-standard-4(vCPU 4コア、メモリ16GB)などの強力なマシンを短時間で立ち上げ可能。開発の進捗や負荷に応じてスケーリングを柔軟に行う。 統一された開発環境 チーム全体で同一環境を利用し、「自分の環境では動く」問題を回避する。新規メンバーが加わった場合でも、同一の手順でVMを構築できる。 セキュアなアクセス SSH接続とIPアドレス制限を組み合わせ、堅牢なセキュリティを実現する。ソースコードや秘匿情報を安全に管理できる。 開発環境の特徴 Ubuntu 22.04 LTSベース Git、Docker、GitHub CLIなどの主要ツールをプリインストール Terraformでインフラをコード管理し、再現性を確保 VSCodeのRemote-SSHを用いたスムーズな開発体験 セットアップ手順 リポジトリのクローン Terraform構成管理用リポジトリ(例: vm-infra)を手元にクローンする。 環境変数の設定 .env ファイルを用意し、プロジェクト名やGCP認証情報などを定義する。 Terraformの実行 Terraform init → plan → apply でGCEインスタンスを自動構築する。 VSCodeでのリモート接続 Remote-SSH機能を使い、構築したGCEインスタンスへ接続。ローカルと同等の操作性が得られる。 運用上のポイント 環境変数とシークレットの安全管理 .envファイルやGoogle Cloud IAMを活用し、認証トークンや機密情報を外部に漏らさない。 コードによるインフラ運用 Terraformで定義した構成を共有し、イミュータブルな環境を維持する。トラブル発生時にも再構築が容易。 スケール調整による効率化 ビルド負荷が高いときはvCPU数を増やし、不要になれば小さいマシンへ切り替える。リソースを最適化することでコスト削減にもつながる。 まとめ Mac上で動作が難しいソフトウェアを扱う際、GCE上にLinux開発環境を構築する手法は有効である。Terraformでコード化することで環境の再現性が高まる。さらにVSCodeのRemote-SSHによる使い慣れたIDE操作を維持できる。

April 1, 2025

Recovery Service

wallet revoveryの仕組みを改めてまとめたが、これを非エンジニアがすべて理解することは困難に感じられる。 そこで、下記のようなサービスを考えた。もし興味があれば連絡してみてほしい。 Bitcoinウォレット復旧サポートサービスのご案内 「昔作ったBitcoinウォレットの残高が取り出せない」「Seedは持っているけれどウォレットを再設置できない」といったお悩みをお持ちの方をサポートするサービスです。 当サービスでは、お客様がお持ちの**Seed(または拡張公開鍵)**をもとに、どのウォレットソフトで利用されていたかなどをヒアリングし、最適な手順で残高を復旧いたします。 サービスの特徴 安心・安全な運用 可能な限り「秘密鍵(Seed)を当方に預けず」に済む方法をご案内します。 お客様自身の環境で生成していただく**拡張公開鍵(xpub, ypub, zpubなど)**から、まずはウォッチ専用(完全に閲覧のみ)の形で、残高やトランザクションの確認のサポートを行います。 実際に送金を行う際は、お客様が秘密鍵をお持ちのウォレット上で署名を行えるよう、手順を丁寧にサポートいたします。 豊富なウォレット形式に対応 レガシーアドレス(P2PKH、1xxxx) ラップドSegWit(P2WPKH-in-P2SH、3xxxx) ネイティブSegWit(P2WPKH、bc1q系) Taproot(P2TR、bc1p系) BIP44/49/84/86など、複数の派生パスでのスキャン・復旧にも対応します。 スキャンによる漏れの防止 お客様が長期間多数のアドレスを発行していた場合でも、recoveryWindow(アドレス探索の範囲)を適切に設定することで、できる限り「取りこぼし」のない復旧を目指します。 過去の取引履歴を追跡し、未使用アドレスや高インデックスのアドレスも丁寧にチェックします。 明朗な手数料 復旧に成功した金額(=回収できたBitcoinの総額)の**10%**をサービス手数料としていただきます。 事前の調査やお見積りの段階で、復旧作業の流れや必要となるステップ・セキュリティ対策を分かりやすくご説明します。 ご利用の流れ お問合せ・事前ヒアリング まずは、ウォレットの使用状況(使用していたアプリ名、保有しているSeedの状態など)を簡単にお知らせください。 「Seedしか分からない」「拡張公開鍵をエクスポートできるか分からない」などの状況でも、分かる範囲で情報をお伝えください。 ウォッチ専用での残高・取引確認 秘密鍵(Seed)を共有いただく前に、まずはお客様が独自に生成した拡張公開鍵(xpub / ypub / zpub など)をお預かりし、ウォッチ専用の状態で、使用された可能性のあるアドレス一式を確認・スキャンします。 見つかった残高・取引の状況をご報告いたします。 最終的な復旧手続き 実際にビットコインを新規の安全なウォレットに移動させる場合、署名用の秘密鍵(Seed)が必要になります。 お客様自身のウォレットにて署名していただく方法をご案内するため、当方が秘密鍵を「預からない」形での復旧を推奨しています。 作成したトランザクション(PSBTなど)をお客様側で署名・実行していただき、復旧を完了します。 お支払い(手数料10%) 復旧した金額の10%を当方にお支払いいただきます。 実際の金額や送金方法、支払いタイミングなどは事前に合意を取った上で進めます。 セキュリティとプライバシーへの配慮 秘密鍵の取り扱い 可能な限り当方が秘密鍵(Seed)を受け取らなくても作業ができる仕組みを整えております。 スキャン情報の扱い 残高・取引状況の調査は、原則としてお客様から頂いた情報のみに基づいて行い、業務完了後は当方でも不要となったデータは責任を持って破棄します。 よくあるご質問 Q1. Seedしか分からず、ウォレット名が分かりません。大丈夫でしょうか? A. 問題ありません。BIP44/49/84/86に準拠した複数の派生パスを試し、残高を網羅的にスキャンすることで復旧を試みます。 Q2. 途中でキャンセルすることはできますか? A. 可能です。ただし、当方がすでに行ったスキャン作業に相応する調査費をいただく場合がございます。利用規約をご確認ください。 Q3. 復旧後、また同じようなトラブルになりたくありません。追加で学ぶ機会はありますか? A. ウォレットのセキュリティやバックアップ方法などのご相談・教育サービスも別途ご案内しております。お気軽にご相談ください。 お問合せ メール: bruwbird@gmail.com

March 31, 2025

Q-Matrix: 認知思考を体系化するフレームワークの分析

この手のフレームワークは無限にあり、なんでも良いと思うが、いくつか引き出しに入れておくことは重要だと感じている。 序論 認知思考の拡張および深化を実現する方法論として、カリフォルニア大学教育学部研究チームによって開発されたQ-Matrix(質問マトリクス)が注目されている。本フレームワークは36種類の質問パターンを体系化し、認知プロセスの段階的発展と分析的思考の向上に寄与することが実証されている。多様なフレームワークが存在する認知発達領域において、Q-Matrixは比較的単純な構造ながら高い汎用性を有する思考ツールとして位置づけられる。 Q-Matrixの定義と機能 Q-Matrixは、テキスト分析における表層的事実の把握を超え、因果関係、将来的展望、システム的影響などの多層的理解を促進する構造化フレームワークである。情報の整理・分類機能に加え、認知構造の体系化および議論の多角的展開を可能にする分析ツールとして機能する。 実装方法論 Q-Matrixの実装プロセスは以下の段階で構成される: テキスト分析と要約 対象テキストの中心概念および主要要素を客観的に抽出し、体系的に整理する作業を行う。 マトリクス構造の理解 6つの疑問詞(Who/What/Where/When/Why/How)と6つの助動詞(is/did/can/would/will/might)の掛け合わせにより生成される36のセルから成る基本構造を把握する。 質問生成プロセス テキストの論点に基づき、事実確認レベルから推論・予測レベルまでの段階的質問を生成する。 複雑性レベルの階層化 質問を以下の認知的複雑性に基づき分類する: レベル1: 事実確認(記憶・再生レベル) レベル2: 因果関係分析(理解・解釈レベル) レベル3/4: 仮説構築・予測(評価・創造レベル) 総合分析フレームワークの構築 生成された質問群を用いて対象テキストまたは課題の構造的かつ多角的分析を実施する。 マトリクス構造 Q-Matrixの基本構造は以下の表に示される: 時間/視点 何? いつどこで? どれ? 誰? なぜ? どのように? 現在 #1 (レベル1) ・〜は何か? ・〜の意味はなんだろうか? ・〜との違いはなんだろうか? #2 (レベル2) ・いつだろうか? ・どこだろうか? #3 (レベル3) ・〜はどれなのか? ・〜はどれにするのか? ・〜の長所と短所はどのようなものだろうか? #4 (レベル1) ・誰がするのだろうか? ・誰がしているのだろうか? ・誰にしているのだろうか? #5 (レベル2) ・なぜそうなのか? ・〜が重要なのはなぜだろうか? #6 (レベル3) ・どのようにしてそうなるのか? ・どのような仕組みなのだろう? ・〜と〜はどのように似ているのだろうか? 過去 #7 (レベル1) ・何をしたのか? ・〜はなんだったか? ・昔はどうだったのだろうか? #8 (レベル2) ・いつだっただろうか? ・どこだっただろうか? #9 (レベル3) ・〜はどれだったのか? ・〜はどれにしたのか? ・〜の長所と短所はどのようなものだっただろうか? #10 (レベル1) ・誰がしたのだろうか? ・誰にしたのだろうか? #11 (レベル2) ・なぜそうなったのか? ・〜が重要だったのはなぜだろうか? #12 (レベル3) ・どのようにしてそうなったのか? ・どのような仕組みだったのだろう? 可能性 #13 (レベル1) ・何ができるだろうか? ・〜について最良なものはなんだろうか? #14 (レベル2) ・いつできるだろうか? ・どこでできるだろうか? #15 (レベル3) ・どれができるのだろうか? ・ほかの可能性はないだろうか? #16 (レベル1) ・誰ができるのだろうか? ・誰ができたのだろうか? #17 (レベル2) ・なぜできるのだろうか? ・なぜできたのだろうか? ・〜が最良かもしれないのはなぜだろうか? #18 (レベル3) ・どのようにできるのか? ・どのようにできたのか? 予測 #19 (レベル1) ・何がありえるか? ・〜を解決するかもしれない方法はほかに何があるだろうか? ・〜は〜に、どんな結果をもたらすだろうか? #20 (レベル2) ・いつありえるか? ・どこでありえるか? #21 (レベル3) ・どれならありえるのだろうか? ・ほかを選んだらどうなるだろうか? #22 (レベル1) ・誰ならありえそうか? ・誰ならありえたのか? #23 (レベル2) ・なぜありえるのだろうか? ・なぜありえたのだろうか? #24 (レベル3) ・ほかの方法を使うとどうなるだろうか? ・〜は、以前に学んだことや習ったことと、どのように関連しているだろうか? 意図 #25 (レベル1) ・何をしたいのだろうか? ・〜の意味はなんだろうか? ・〜について、よく知っていることと、知らないことはなんだろうか? #26 (レベル2) ・いつしたいのか? ・どこでしたいのか? ・時間と場所についてどうしたいのか? #27 (レベル3) ・どの選択をしたいのだろうか? #28 (レベル1) ・誰がしたいのか? ・〜を誰と関係させたいのか? #29 (レベル2) ・〜をしたいのはなぜか? #30 (レベル3) ・〜をどのようにしたいのだろうか? ・〜のために、〜をどう使うことができるだろうか? 想像 #31 (レベル1) ・もし〜になったら、何が起きるだろうか? ・〜と〜を比べたらどうなるだろうか? #32 (レベル2) ・もし時間と場所が〜になったらどうなっただろうか? #33 (レベル3) ・もし〜を選んだらどうなるだろうか? #34 (レベル1) ・もし(人名)が関わったらどうなるだろうか? #35 (レベル2) ・もし〜が原因だったらどうなるだろうか? ・〜に賛成だろうか、それとも反対だろうか? #36 (レベル3) ・もしほかの手段をとったらどうなるだろうか? ・もしかが変わったらどうなるだろうか? 理論的考察と応用 Q-Matrixの理論的基盤は以下の要素から構成される: ...

March 31, 2025

Ways to Think About Agi

https://www.ben-evans.com/benedictevans/2024/5/4/ways-to-think-about-agi の翻訳。 llmを使い、かなり意訳している。 AGI の考え方 背景と目的 汎用人工知能(AGI)が実現すれば、あらゆる作業の自動化にとどまらず、人類の知的活動に深い変革をもたらす。たとえばコンピュータ小説『A Logic Named Joe』(1946年)では、あらゆる疑問に対して瞬時に答えを返す “ロジック” が描かれた。技術的には未確定だが、実現した場合の社会的影響は極めて大きい。 過去の興奮と失望 AI 研究の歴史では、定期的に「ブレイクスルーが近い」との期待が高まっては失望に終わり、多くの学者や専門家が当初の予測を外してきた。1970 年代の AI ブームや、繰り返し訪れた “AI ウィンター” がそれを象徴する。理論的には「数年で人間並みの機械知能が生まれる」との意見もあったが、実際は多くの未知の問題が残されていた。 不確実性の本質 AGI がいつ、どのように実現するかは誰も正確に知らない。専門家の間でも意見は割れる。LLM(大規模言語モデル)がスケールして AGI に到達する可能性はあるが、多くの未知のブレイクスルーが必要だという見方もある。根本にあるのは「知能が本質的に何であるか」という問いへの答えがまだ得られていない点であり、神学や哲学に似た議論が繰り返されている。 悲観論か楽観論か AGI による “人類滅亡” シナリオを懸念する専門家もいる。一方、AI 技術はただのソフトウェアと見る向きもある。既存の自動化が社会や産業を変えたように、AGI も新たなインパクトを与える可能性が大きい。しかし、起こりうるリスクをすべて排除することは難しい。オープンソース化が進む現状では、たとえ規制をかけても世界中で並行して開発が進むだろう。 具体例と類推 AGI のリスクを核分裂や隕石衝突になぞらえる議論もある。しかし、これらは一度起きれば確実に破滅をもたらす自然現象であり、ソフトウェアとは性質が異なる。ソフトウェアは災厄を起こす潜在力がある一方で、多大な恩恵をもたらす道具でもある。20 世紀から進行してきた自動化の多くは労働構造を変えたが、同時に多大な利便性も生んできた。 月ロケットにたとえる視点 アポロ計画では、重力とロケット工学の理論が確立していたために「ロケットを大きくすれば月に行ける」と計算で導けた。しかし、現在の AI には対応する理論モデルが存在せず、なぜ LLM が機能するのかさえ十分に分かっていない。それでもモデルは拡大し続け、何かに到達しつつあるように見える。だが、その到達点が本当に「人間を超える知能」なのかどうかは未知数である。 結論 AGI が真に実現するかどうか、あるいはいつ実現するかは確証を得られていない。悲観的なリスクを示唆する見解と、楽観的な技術開発論が同時に存在する。すべては「知能が本質的に何であるか」という未解明の問いに依存する。実現すれば大きな恩恵をもたらす可能性がある一方、取り返しのつかない被害をもたらすかもしれない。この不確実性こそが AGI 論の核心である。 人工知能 Benedict Evans 2024年5月4日

March 28, 2025